◆松本里美の『Let's 銅版画!』◆
第六回:描画〜腐食〜刷りの一般的方法
ニードルで描画していくのがエッチング。彫るのではなくて、茶色く見えるグランドをはがしていく感じです。
これは、チップス先生の奥様キャサリン登場の絵。1896年頃は、女性が自転車に乗る事は珍しかったみたいですよ。
左上のドロドロした液体は、塩化第二鉄の溶液です。この中に版を入れて描画した線を腐食します。溝ができて、そこにインクを詰めます。新しい液に1時間10分入れました。古い液や暑い時期になるともう少し短くしなければなりません。 ザッと水洗いしてからお醤油で洗います。これで腐食作用の進行が止まります。お醤油は・・・・丸大豆や減塩じゃなくてもいいのよね。キッコーマンでもヒゲタでもノダでもOKです。
ホワイトガソリンでグランドをきれいに取り去ります。版画は危険がいっぱいです。 きれいになった版ですよ。ピカピカしてます。 インクをのせたら、まず寒冷紗という粗い布でだいたいのインクを取ってしまいます。
ゴワゴワした布です。使う前によ〜くもんでおきましょう。 丸めて円を描くようにインクを取ります。
この絵は、奥さんが亡くなってだんだんFUNNYになってきたチップス先生の風貌を描いたものです。長髪になっていくのでした。
仕上げは電話帳。強いし、油分をよく取ります。勿論ロール紙という紙でもいいし、人絹でもいいですが、人絹だとインクが取りすぎになる事があります。わたしは油膜を少し残すのが好きなので、電話帳が多いです。

セピアのインクで試し刷りをしたものです。左は結婚して幸せいっぱいの時のチップス。まん中「Mr.Funny Chips」。右は、晩年のチップス。窓から生徒達を眺めています。加筆するものはまたグランドをひきます。すべてこれに色の版を重ねます。

キャサリンの絵に花の2版目を重ねて刷りました。キャサリンが登場する絵は華やかな色を使う事にしました。この絵はこれでOK!版画用の紙にきれいに刷って出来上がりです。花の版に使った面の腐食のことを、アクアチントと言います。 アクアチントをするための作業。松やにの粉を版に蒔いて、熱して溶かすと小さなドット状態ができます。これを腐食すると面の腐食ができます。ガウンと芝生をグラデーションをつけて濃くしたいので、その他の部分には黒ニスを塗って止めておきます。では、次回はアクアチントのご説明をいたしましょう。