★★09/2/13第七回更新しました。★★

●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
・・・混沌・不条理・喪失感、しかしそこには人間への崇高なまでの愛がある。
限り無く美しくカッコイイ映像、そんなこんなを語ってみよう〜

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。
2/10、木場公園内のテントで、ジンガロの『バトゥータ』を見てきました。エミール・クストリッツアの世界を見るかのようだった。
09/2/13


第八回:番外編だよ『ジンガロ』
というわけで、今回はクストリッツアさんの作品ではありません。でも、クストリッツアさんの作品を好きな方だったら、のめり込んで見てしまうと思われる作品、『BATTUTA/バトゥータ』についてです。
ジンガロのサイト http://www.zingaro.jp/

 馬と人が魅せるフランスの騎馬スペクタクル、ジンガロの 『バトゥータ』をみてきた。
 木場公園内にテントが三つ。会場とカフェ、ショップのあるブースと馬舎。サーカスというよりも、演劇に近いような歌ってないけどオペラを見てるような総合芸術の域に達しているもので、とてもすばらしかったです。


ミュージシャン勢揃い。馬のほかにはクマもいる。


 今回はルーマニアの10人編成のロマブラスバンドとトランシルヴァニアの5人編成のロマ弦楽隊が、会場の上手下手(円形なのでなんとも言えないけど)に陣取り、交互に演奏していくのでした。ブラスバンドの方はファンファーレ・チョカリーアと同じ村の出身で、彼らの曲を3曲やってました。クストリッツア監督の名作「アンダーグラウンド」からもあり、花嫁のフライヤーを見た時に思った通り、やはりこのあたりが土台になっているようでした。
●ファンファーレ・シュカール
 (モルドヴァ地方ブラスバンド)
●タラフ・ドゥ・トランシルヴァニア
  (トランシルヴァニア地方弦楽アンサンブル)


 左の写真は パンフレットからのものです。ブラスバンドの方は、時々騎手の方に声をかけたりで楽しい。

 ファンファーレ・チョカリーアのような高速の曲に乗って馬が疾走。弦楽隊のゆったりした曲の時には、優雅な花嫁が出てきたりします。その交互の構成もよかったですよ。


 衣装も馬も美しい。疾走感とバルカンブラスがピッタリ合っていて、「ジプシーの時」のオペラは見られなかったけれど、それに匹敵するような舞台を見せてもらった感じがしました。
 12人くらいの騎手たちが次から次へと現れる。馬上で、クストリッツアの映画のように恋があり、喧嘩があり、怪しく踊り、仲間との狂乱があります。馬車もシトロイエンもおばあさんも、マリア様や棺桶も出てきます。結婚、誕生、葬式、ロマのくらしを人馬のみによって生き生きと表していました。 バルタバスは今もトレーラーハウスに住んでいるそうで、物を持たず、そしてひたすら馬を愛し、独自の美意識と精神世界を音楽と共鳴させ表してきた。今回のものしか見てはいないけれど、多分、今回の楽しさがたくさん見られた『バトゥータ』が、彼のたどり着いた見せ方なのだろうと思う。クストリッツア映画同様に、深淵で重たいものをすべて内包し行き着いた先の表現ほど、軽やかで明るくなるものなのだ。大人のサーカスであり、子どもでもきっと楽しめたハズだ。

 馬具作りから堂々とした歴史が始まったエルメスが特別協賛。エルメスの皮は美しいです。でも、馬はもっと美しい。
つやつやしていて、そして、筋肉が躍動し、たてがみがなびきます。そこにまた美しい騎手たち。彼らの着ている衣装も、白いブラウスやガウチョパンツなどどれもカッコよく、ブーツなんぞはエルメスなのか?やっぱし?足がみんな長いので似合うのよねー。
  馬に乗る時は、姿勢が良くなければならないので、とにかく騎手たちのたたずまいが美しい。しかも、美男美女揃いでした。男も髪を長くしている人が多く、馬の尻尾のようになびいていました。いや〜〜カッコいい!
 感心したことはたくさんあるのですが、馬も人も小道具もすべてが丁寧に磨き上げられて手抜きがないんですよねー。数種類出てきたベールもそれぞれがデザインが凝っていて、きれいでした。

 馬たちは揃って毛を同じようなデザインに刈り込んでいて、背中は長い鞍のように五分刈りになっており、その下は短く刈り込んでました。その鞍のように見える毛並みがツヤツヤしているのですが、運動量が多くなってくるといよいよエルメスのなめし革のように輝いてくるのでした。

 馬たちはどうやって演技を覚えるのやら・・・・これは本当に演出通りなのか?と思ったのは、ほとんどの馬が退場したあとに、水場に残った3頭が、1頭づつ、間隔をおいて、しかも演技してるかのように、砂の上に寝そべったり、水浴びをしたりしながらゆっくりと退場していくのです。普通のサーカスだったら、必ず人がムチを持って指示するのに、そうゆうのがないんですよね〜。バルタバス、凄い!

 ジンガロというのは、パンフレットによると団長のバルタバスの愛馬の名前だったのですね。99年に亡くなったそうで、一緒にダンスをした伝説のシーンがあるそうです。見たいなあ。
 イギリスに行った時、ウエールズでポニーライディングに挑戦しました。こうゆうのは初めてで、一番驚いたのは、意外に馬は背が高いってことでした。エイッと一人で乗るのもやっとで、立ち上がるなんてことは到底考えられんのでした。しかし、ジンガロの騎手たちはいとも簡単に飛び乗っちゃうんだよね〜

 クマも出てくるんです。ちょっと見ほんもののクマで、エルメスが作ってんのかしらん?と思うほどよくできてます。これに入った人は相当の人ですよねえ、クマのきぐるみのまま馬に乗って曲芸しちゃうんですからね〜。
 サーカスといえば「クマ」というくらい、クマのサーカスがわたしは好きです。
そういえば、クストリッツアの『ライフ・イズ・ア・ミラクル』でもクマが出てきましたね。そして、ロバも重要な役割を与えられていましたね。ジンガロの主宰のバルタバスは、今回はロバに乗り登場しました。成金な派手なスーツというのも何かクストリッツアのいつものキャラなので、まさに生でクストリッツア映画を見ているかのようでしたよ。
 クマといえば、 アービングの「ホテル・ニューハンプシャー」が思い出されます。わたしはこの小説が大好きなんです。クマがいい(映画ではナスターシャ・キンスキーが入ってました)。今回のジンガロはわたしの大好きなクストリッツア&バルカン音楽とアービングの世界になっていて、本当に夢の中にいるようでした。

 馬って本当にきれい。
スタンディングオベーションで終わりました。

WOWWOWで、生中継があるそうですが、まだまだやってますので、是非見に行ってみてくださいね!わたしもお金があったらまた見たいです。(ちょっとお高いですが、エルメスのスカーフよりずっと安いです・・・)

とっても詳しい記事ココ
http://doraku.asahi.com/entertainment/stagenavi/info/080919.html

(更新日:2009/2/13)


●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
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エミール・クストリッツア&ノー・スモーキング・オーケストラの初来日、楽しかったーーー!
08/7/3


第七回:ライヴ・イズ・ア・ミラクル

CD『UNZA UNZA TIME』以来のおつきあい、エミール・クストリッツア&ノー・スモーキング・オーケストラの東京公演が終わってはや一週間。今だに爽やかな風が身体に吹いてくる感じが残っています。


Tシャツがあったらしい・・・知らなかったわ・・・


突然の来日に、「エ?!どうしたの?なんで?」と耳を疑って数ヶ月。エミールさんのドタキャンも無く、無事に燃える初来日が終了しました。あとで知ったのですが、Tシャツが売られていたようで、画像をUPされていた方がいたので拡大してよ〜く見てみたら、07〜08のツアーだったんですね。昨年の10月のロシアから始まって、45カ所でのコンサートのようです。東京は33番目で、その前は韓国。圧倒的にフランス国内のコンサートが多いですが、これはパンクオペラをやったということと、クストリッツア監督が住んでいるからなんでしょうか。ファンが多いんでしょうね。そのほかポーランド、イスラエル、ベネズエラ、オーストラリア、セルビア、ラトビア、ポルトガル、スペイン、最後がギリシャのアテネのようです。内18回フランスですね。

2008/6/26木曜日、19:00からのJCBホール。

メンバーは、ボーカル、ギター、アコーディオン、ベース&チューバ、バイオリン、ドラム、サックス、ギターはもう1本クストリッツア監督が左側で、いかにもリードギタリスト風。みなさんに大事にされていいとこチョロチョロと弾いたりしてはいたものの、あとで感想が書かれたブログなどをいくつか見ていたら、何度もメンバー数人にディストーションペダルをOFFにされていたとか。わたしたち(4人で行きました〜)の席は右側(といってもほとんど真ん中寄り)の前から5列目で、相当良い場所でしたが、そこまでは見えなかったですねー。クストリッツアさんに何度も近寄っていたのは、音楽的リーダーのヴァイオリンのダヤンさんとギターの方の二人。さもありなん・・・なお二人です。

 演奏は、ほとんどノン・ストップ!『東欧のパンク』と最初言われていたと思いますが、ミクスチャーなんですよね。スカだったりロマだったりハードロックだったりいろいろ。ロマ風になるのはやはりヴァイオリンとアコーディオンの調べのせいのような気もする。

 『パンクオペラ/ジプシーのとき』 からが多かったと思います。その前に十分CD聞いてましたからねぇ〜、1曲以外は全部知ってる曲だったので、楽しくて仕方なかったですが、曲を知らない人でも十分にノリノリの楽しいコンサートだったと思います。ほどよい広さの会場は、最初から最後までサッカーのスタジアムのような一体感に溢れていて、とても居心地がよかったでした。

以下は、27日、ライブ翌日書いたもの。日記から転載しました。(多少改変)
*******************************
行ってきました〜、サポーターですから〜
 2001年の『SUPER8』は、彼らのロードムービーで、ステージの様子はこれで十分にわかります。で、これから7年たって、いやー、メタボリッカーになってましたねえ。メンバーが楽器でしか判別できないほどではないか!アコーディオンのミロシェヴィッチは元々小太りだったから、すぐにわかるけど、クストリッツア監督がスマートに見える。
 それにしても、いきなりの来日で、しかもたったの1回。ほかの関連イベントも見当たらず、不思議な来日でした。わたしの希望としては、立ち姿が段々似てきたオシム監督と監督対談をして欲しかった・・。なんといってもオシムはユーゴの誇りだし、サッカー命のクストリッツアさんは、きっとオシムのいる日本には少なからずラブな気持ちがあるに違いない、とわたくし思っております。W監督対談、いつか実現してもらいたい。ユーゴの話でもサッカーの話でも盛り上がってもらいたい。
 ちなみにオシムもサラエボ出身、ユーゴ分裂前の1990年FIFAワールドカップイタリア大会でのベスト8について、クストリッツア監督の想いは熱い。映画の中でも再三出てくる。その時の代表監督がオシムなのだから・・・
エミーレ・クースター

 見にいったのはバルカンもんでいつも一緒に行く面々4名。JCBホールはステージが近くていいです。我々はアリーナの前から5列目、右側。ビール片手に観戦。
 旧ロシア国歌(らしい)が流れて、始まった。エネルギッシュなヴォーカルのドクトル・ネレ・カライリチはアディダスのサッカーユニフォーム姿で、クストリッツアはTシャツ、ほかの人たちは白いスラックスに胸にひらひらのついたブルーのシャツで、ふざけてる。このおふざけ具合は一体なんなのか・・・・ふざけずにいられないこの体質が、わたしはどうしても好きなので、惹かれるのでしょうか・・・。思えば、ガイタレは滅多にいかないわたしが行った人というのはふざけた人ばかりで、まともな大御所はバブルの時しか行ってない。
 それはどうでもいいんだけど、ネレがニール・イネスに見えてしまう時があるので、ちょっとそんなことを思ってしまった。今ワールドカップの予選中なんでサッカーの恰好だったのかわからないけど、きのうの観客の雰囲気や、終止高速の2/4のリズムの感じでのるバンドと観客の一体感が先日見たサッカーの試合(オールジャパンvsバーレーン戦見てきたばっかり)の熱いサポーターと同じ匂いを感じておもしろかった。最後も旧ロシア国歌が流れておわって、全員バンドのサポーターと化していたのでした。ああ、だから熱っぽくて楽しかったのかな。(何故旧ロシア国歌だったのだろう・・)

 メンバーは、ドラムがクストリッツアジュニアじゃなかったのが残念でした。キーボードもいなかったですね。それとメタボになっててわからなかったのですが、ベースの人がチューバを担当してたのか、チューバの人がベ−スもやってたのか判別つかず・・。
 すばらしかったのは、メタボおやじばかりなのですが、最初から最後までアップテンポの曲だけで休み無く通したことで、何曲かは静かできれいな曲もあるのに、まったくやらなかった。ずっとノリノリ。あのウンザウンザのリズムは、ずっと小走りに走りつづけるリズムで、映画「アンダーグラウンド』の最初のシーンを思い出してしまいます。楽隊が小走りに走りながら崩れた街に入ってくるシーン。
 曲は、彼らがサントラをやった『黒猫・白猫』『Life is a Miracle』『パンクオペラ/ジプシーのとき』からがほとんどで、あとはウンザウンザ・タイムなど。

 途中何度も観客の中のきれいどころをステージにあげていた。みんな女好きだった。ステージは大道芸みたいのもあって、ロックバンドと言ってはみてもやはりジプシーバンドという感じで、ステージというよりは道路でやってる雰囲気さえする。それにしても、演奏がうまくてビックリした。クストリッツアさんもちゃんとリードギターを弾いていて、『SUPER8』の時よりもずっとうまくなっていたし(何故か間違えないか?とドキドキしながら見た)。彼らは結構な年齢なんで、途中ピンクフロイドやディープパープルやジミヘンをやったり、ギターといえばすぐに「エリック・クラプトン」を引き合いにだしてしまうというのは、仕方がないんですねー。まったくベタですねえ。たとえがデビッド・ベッカムだったりカレーラスだったりパバロッティだったりと、ひねったところが全然ないところが英国人ニール・イネスとは全然違うんだけど、なーんかかぶる、ネレ・カライリチ。
 我々もみんな最初からスタンディングで、ネレがステージを降りて来た時にはミーハーのように腕に触ってしまって嬉しかったです。水をかけてもらってミーハーなんで嬉しかったです。中心はこのヴォーカルのネレさんで、なんでクストリッツアが冠になっているかについては誰もが余計な疑問を持つのですが、いいんですコレで。時々しゃべるクストリッツア。 ネレに「ネダモ、コソボ」と連呼させたり(実はその時は「メタボ」と言ってるのかと思っていた。真相は*へ)、「革命の準備はできているかい!」と呼びかけたりもする。観客が「YEAH!!」と答えるとアッサリと『OK Next Time」とあきらめたように言う。
  映画もそうだけれど、こうした姿勢が一貫している。どうしようもない現実。個としての無力。大きな力には簡単にはたちうちできない。口ではなんとも言えるけれど、半分の諦めがある。それでも、言うことは大事なのだし、それでも、生きていく人々は笑っていたりする。苦笑いとは限らない。奇跡的に明るかったりする。
*(「メタボ、コソボ!」と言わせてたのかと思って笑ってたけど、あとでバルカンのサイトを見たら、あれは「Ne damo、コソボ」コソボを渡すな!と言ってることが判明!ウヒャー、笑い事ではなかったわい)

 『パンク・オペラ/ジプシーのとき』は、昨年ヨーロッパでのみ上演されたもので、わたしは到底行けなかったのでとても残念で仕方がなかった。でもサントラはすぐに手に入ったので日々聞いていた。ネレの声はよくわかっている。ほかはオペラの出演者の声だと思うのだけど、今回はヴァイオリンのダヤンさんとアコーディオンのミロシャヴィッチさんがオペラ風に歌っていた。この二人がだいたいコーラスをとったりしているのだけど、歌い方はネレとはまったく違う。ネレさんはロックバンドのヴォーカリストとして歌っているのだろうけれど、ほかの二人の節回しはロマミュージックの節回しなんですねー。この二人がしかも、音楽的にとてもすばらしくて(ほかの人もうまいけど)、それは『SUPER8』を見てもわかるし、映画のほとんどの曲を書いているのがダヤンさんで、とても良い曲を作っています。うまいしね〜・・・・しかし太ってしまいました。『Life is a Miracle』の時もそんなに太ってなかったのになあ。『黒猫・白猫』「Life is a Miracle』にも出演しています。ネレは、 「Life is a Miracle』ではいやらしいハンガリー人を好演(といってもそのまんまですが)してました。

 特にパンフレットがあるわけでもなく、ステージにも何も凝ったものはなく、本当にアッサリしたものだったのですが、観客とバンドがとても暖かく一つになった感のあるすばらしいライブで、ドクトル・ネレのエネルギッシュさとやはりクストリッツア監督の映画を見ている人たちの熱い気持ちがサッカーのサポーター現象を生んだんだと思いますねえ。2時間ちょっと、大汗をかいて楽しみました。近くで見れて幸せでした。
 わたしの回りのごく一部では熱狂的にこうゆうのが好きなんですが、お客さんの中にもいろんな人がいて、すれ違った男性二人の内の一人が「この人有名なの?聞いたことない」というともう一人が驚いて「すごく有名な監督さんですよ!」と答える。象徴的だなあ。クストリッツア監督はとてもすばらしい作品を作っているし、別に賞にこだわるわけではないけど、カンヌもパルムドールもとってるでしょ、でも、認知度もの凄く低いんですよねえ。日本では。まったく知らないか、凄く興味をもたれているか・・・極端。そこがまたロックな感じで良いですけどね。
 今回、クストリッツア監督がやはりカッコよかったと思うのは、まったくのバンドの一員としてやってきてるということなんですねー。オシムとのW監督対談が見たい、なんて最初に書きましたが、ネレを中心とした1バンドの1ミュージシャンとして来日しているのが凄くカッコいい!このロックなスタイルがわたしのLOVEの大きな理由の一つです。

本当に盛り上がっちゃいました。

*******************************

と、興奮覚めやらずの状態での日記を転載いたしました。

 とにかく、一番感じたのは全体が一体感に満ちていたというこのスタジアムのような感じで、 これはきっとこのバンドの底に流れているトルコの軍楽隊から辿って来た音楽性というかリズムにあるのじゃないのかなあ?と勝手に考えてみました。サッカーのスタジアムに行くと、誰が作るのか知らないけれど、サポーター独自の応援がずっと聞こえています。中心にはスネア(小太鼓)が二つ。これを中心に「オ〜レ〜オレオレ〜〜」と始まるわけですが、ずっと立てノリで盛り上がりますね。ああいったものってのは、元を辿るとトルコの軍楽隊なんだと思います。鼓舞するための音楽だから、否が応でも盛り上がってくる。それもノンストップでやるから「行け、行け〜〜!」てなことになる。
 ネレの変なダンスもカズみたいに見えてくるしねえ、ああ、もう、どうしてもサッカーにしか見えなくなっちゃいました。あ、コレは本当にまったくわたしの個人的な感想なんで、あしからず。

 それにしても、演奏よかったなあ。それと、コントもやってくれてよかった。
 ご存知の方も多いと思いますが、わたしは音楽もやっていて、まったくやってる音楽はこうゆうのじゃないんですねー。でも、不思議なもんで、そうゆうことって全然関係ないんですよね。本当にいろんな音楽を聞いている中の一つとして、わたしは東欧の音楽が好きなのですが、それとはまた別に、 なんといってもコミックバンドが好きなんですよ。
  ドンキー・カルテットもクレイジー・キャッツ
も演奏は本当にうまかったですよねえ。ウガンダさん亡くなってしまいましたが、ビジーフォーもうまかった。英国ではボンゾ/ドッグ・ドゥーダー・バンド(コミックバンドに入れてしまってすまんですが)、ラトルズ(この二つともニール・イネスが入っています)と、みんなうまいですからねえ、ラトルズなんて、ギターはオリー・ハルソールですからね!!凄い!コミックバンドが一番好きって言ってしまって、どうかとも思いますが、本気でわたしはそうなんです。

 ノー・スモーキング・オーケストラがコミックバンドかといったら、そうでは無いと思います。いや、絶対そうじゃないってばっ。でも、そうゆう要素はある、というか、楽しませようという一心なんでしょうね。彼らの数人は俳優としても何の違和感もなくクストリッツア映画に登場しています。バンドもコントも俳優も、境目がないかのようです。
 そういえば、ギターの方、ドクトル・ネレと一緒に変なことさせられる時ちょっと恥ずかしそうでしたね。あまり向いてないのかも。ギターまわすくらいで。

 楽しかったライブは奇跡のような一瞬でした。ライブ・イズ・ア・ミラクルでしたね。また来てね!


次回はコレです!


 会場で配られていたチラシの中にクストリッツア監督の新作公開決定!というのが入ってました。
 『PROMISE ME THIS』だそうです。どうゆう邦題つくんでしょうね。原題のままでいいとは思うけど。
 よ〜く見ると、また花嫁が走ってますね。それとブラスのロマバンドが見えてますよぉ〜〜、またまたサントラが楽しみです!

では、また!

 

 

 




(更新日:2008/7/5)


●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
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限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。
エミール・クストリッツア&ノー・スモーキング・オーケストラの初来日で多少興奮。なもんで、更新も早い〜。
08/4/7


第六回:オペラ歌手じゃないオペラ

第五回目で、『パンクオペラ/ジプシーのとき(Le Temps des Gitans)/2007』に触れました。パリのオペラ・バスチーユで上演されて、そのあとバルセロナにも行ったようですね。見ることができた人は本当に羨ましいです。そのサウンドトラック(輸入版)、つい最近やっと手元に届きました。ゴラン・ブレゴビッチの映画のサントラが頭にこびりついているため、最初は、こんな風に作らなくてもいいんじゃないのか・・・な〜んてことも思ったのですが、2回3回と聞き倒しているうちに、まさにこれは、クストリッツア監督のやりたかった事なのだ、と理解したのでございました。そして、とても嬉しくなりました。


Le Temps des Gitans/punk opera 2007サントラ


オペラというのだから、役者が演技をしながら歌っていたのだと思いますが、どんな感じだったんでしょうねえ。
ノー・スモーキング・オーケストラのヴォーカリスト、ネレ・カライリチは、ちゃんと役者として出ていたのかしら?演奏は、どこで行われたのかしら?ステージの上かな?それとも、ステージのそばにブースでもあったのか・・・・いやいや、パンクオペラなんだから、ステージの上で役者と一緒くたになって演奏して踊って、ってな感じじゃなきゃあねえ〜、とか、わたしはいろいろと想像を膨らませている次第です。見た方がいらっしゃったら、その辺のところを是非教えていただきたいです。

オペラといっても、このサントラを聞くと、すべての歌手がジプシーまたは東欧の人のように思えます。CDのブックレットを見ても、名前がすべてなんとかヴィッチみたいなんで、そうなんでしょう。だから、オペラ歌手はいないんですよね。かといって、ミュージカル、とも言い切ってないんで、台詞は一体どうなっていたのかなあ?なんてことも疑問の一つです。オペラは、ほとんどが歌になってるわけで、映画でいえば、「シルブールの雨傘」みたいに、台詞も全部歌になってる。ミュージカルは芝居があって、オヨ!!??というところで突然歌いだすわけで、そこが違う。

主人公ペルハンの声が、映画のペルハン役の
ダヴォール・ドゥイモヴィッチくんに良く似た鼻声で、彼は若くして亡くなってしまったので思い出してしまいます。12曲目のインスト『Perhan is dreaming」が、純粋ゆえに汚く染まって行くおかしくて悲しく、美しくもある青年のナイーヴさが出ていて、とても好きです。



ペルハンが映画の中で何度か弾いていたアコーディオンの曲。とてもいい曲で、ペルハンのテーマのように扱われていました。サントラのCDを見ると、この曲はイタリアのトラディショナルと書いてあり、それをゴラン・ブレゴヴィッチがアレンジしているのでした。この曲はきっと今回のオペラにも使われているのだろう、と、勝手に思っていたわたしです。でも、入ってないんですね〜。ペルハンのテーマは上に書いた12曲目なのかな?と思います。

来日がいよいよ楽しみですね。どんな風に歌は歌われるのかな・・・・・ステージはどんな風になるのでしょう。

(更新日:2008/4/7)


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限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

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2年間もほったらかしにしておりました。いやはや。勿論忘れてたわけではありませんよ。その間ワタクシ事でいろいろ変化がありまして、更新ままならずっ。やっと一息。08/3/30


第五回:祝!エミール・クストリッツア&ノー・スモーキング・オーケストラ初来日〜
そして、祝!松本里美はCD『Bronze & Willow』の中で『Wedding Tune』という曲を作った。

第四回目で、大変面倒臭いことを調べて書いたため、しばし放心状態となっておりました。
連載第二回が彼らの特集だったので、彼らについてあまり知らない方はまずはそちらを見てみてくださいね。
わたしが最初に聞いたのはCD『UNZA UNZA TIME』。そして、映画『スーパー8』とくるわけですが、クストリッツア監督作品はゴラン・ブレコヴィッチさん以外、というか、『黒猫/白猫』からはブレコヴィッチさんとは組んでないんですよね。仲違いしたとか、仲直りしたとかいろいろ言われていますが、真偽のほどはわかりませぬ。

2年間も更新できなかったのにはワケがありまして、その間わたくし『Bronze & Willow』という銅版画集&CDを製作しておりました。 版画と共に曲を作り、14曲フルアルバム。これはなかなか大変なことであります。が、なにしろ楽しいことばかりでした。2007/11に出来上がりましたよ。そして、そのアルバムの中にはゲストのミュージシャンがたくさん参加してくださっているのですが、アルバム最後の曲(もう1曲あるのですが)は大阪のジプシーブラスバンド
『フレイレフ・ジャンボリー』さんに演奏して頂いたのでした。彼らが『モルダビアンソング』を演奏しているのも知っていたし、ノリの良い彼らに是非とも結婚式の曲を演奏してもらいたい!わたしは結婚式の歌を歌いたい!と思い、作った曲があります。それが『Wedding Tune』という曲でした。


「Life is a Miracle」2005サントラ


パンフレット



『ドリー・ベルを憶えている?』
1981




『Life is a Miracle』、『パンクオペラ/ジプシーのとき(Le Temps des Gitans)/2007』『ブルージプシー(それでも生きる子どもたちへ)』 など、わたしがさぼって更新していない間にもクストリッツアさんは大活躍でしたね。『Life is a Miracle』ではノー・スモーキング・オーケストラがサントラをやっただけでなく、役者としてクストリッツアJr.とネレ・カライリチが出てました。相変わらず音楽の方は美しかったり、おちゃらけていたりで、楽しめましたね。
全編を通じて流れる『モルダビアン・ソング』はいくつかのアレンジで場面ごとに印象的に流れていました。


マラドーナの映画というのもあったのですが、日本では公開されてませんよね。なにか問題があるのかしら?(ちゃんと公開になり、ちゃんと見ることができました。)昨年2007年は驚きのパンクオペラ『ジプシーのとき』があり(パリまで行ける時間も財力もなくて残念)、そしてオムニバス映画『それでも生きる子どもたちへ』の中で『ブルージプシー」という短編を発表しました。いつものように、どうしようもなく重たいテーマながらもアッケラカンとしたタッチでした。

今年になって、クストリッツアさんの最初の長編
『ドリー・ベルを憶えている?』1981をやっと見ることができて、とても嬉しかったです。 いい映画だった。青春映画ですゾ。
主人公のDino役は若くて初々しいスラヴコ・スティマチ。彼はその後『アンダーグラウンド』でも大役をつとめるし、『Life is Miracle』でも主役だった。どれも良かったなあ。クストリッツア監督の秘蔵っ子なのだろうけれど、アチラでは大変有名な役者さんということですね。

この『ドリーベル〜』の上映会のあった日はスロボダン・シャン監督
「歌っているのは誰?」1980 という映画も見たのですが、これがまた良くって、さらに、このスラヴコさんが(当然ながら1歳若くして)かわいい花婿さんの役で出ていたのでした。ほとんど台詞はないのだけど、うまいの。
この日はまったくもってジプシー祭りと化していて、夜には『ジプシー・キャラバン』を見たのでした。これまた良かった。感想はいろいろですが、世界は音楽で繋がっているってことね〜
タラフのヴァイオリンのおじいちゃんが亡くなった時、外で一日中演奏しつづけるシーンがあったのですが、コレが感動的でした。冠婚葬祭、彼らはずっと演奏するのでした。

冠婚葬祭の曲を作ってみたいもんだ・・・とわたしは思った。
◆ここらでちょっと『Bronze & Willow』の宣伝を◆

Bronze & Willow
松本里美の銅版画と音楽
ーその輻輳する物語
2007


「Bronze & Willow」
くわしいインフォメーションはココ

1.Weeping Willow
2.Lovely Gravy
3.車とかばん
4.モリー・ゴングの一生
5.In the Mousse
6.朝の月no.5
7.化石を見たかい?
8.Wonder in Winter
9.Tango with Bear
10.Eel Pie Island Song
11.ヒバリ
12.アントニオの卵
13.Wedding Tune
14.まぶしいチョコレート

このなかの12と13をフレイレフ・ジャンボリーと共に演奏し歌いました。
特に「Wedding Tune』は、彼らに演奏してもらうことを決めてから実際に作詞・作曲したので、思い入れもありますねー。今年1月に2回一緒にライヴをしました(2008)。本当に彼らにピッタンコの曲ができたと思っているし、やっててとても楽しい曲になりました。

Freylekh Jamboree 2nd CD『ロマンギャルド行進曲』2004
Freylekh Jamboree 3rd CD『ニッポン・クレズマー』 2006

今回のおまけ。「フレイレフ・ジャンボリー」さん。
3枚アルバムが出ていますね。左の2枚は寺田順三さんのイラストがかわいいので、つい見てしまいます。特に2nd.はかわいい。

彼らのサイトの解説によると、
2nd.は
 ボスニア=ヘルツェゴビナ大衆歌謡からモーツアルトまで
 人力グルーヴ!純国産和製ジプシー楽隊CD第2弾!

3rd.は、
 トルコ、スペイン、マケドニア…流れ流れてドナウ川
 エセ・バルカンの薫りただよう純国産和製ジプシー楽隊CD第3弾!
といった具合で、クラシックからクレズマー、ジプシー音楽、様々取り混ぜてやってらっしゃいます。次のアルバムが楽しみです。

http://www002.upp.so-net.ne.jp/freylekh/


フレイレフと一緒にやった時のブログを紹介。
●in TOKYO-吉祥寺MANDA-LA2 1月28日
●in NAGOYA-ゴヤムーン 1月29日

ライヴでは、クストリッツア映画から、『モルダビアン・ソング』『熊狩り』の2曲の演奏も聞くことができました。どちらも『Life is a Miracle』からですね。

『パンクオペラ/ジプシーのとき(Le Temps des Gitans)/2007』


『Le Temps des Gitans』2007
パリのオペラ・バスティーユ


ビックリしたのは、このオペラの実現。ほかの映画ならともかく、この重たい(しかし軽快)映画を舞台にしようとしたことが最初は信じられませんでした。しかも、音楽はThe No Smoking Orchestra
なんですねえ。勿論映画ではゴラン・ブレゴヴィッチ。サントラは本当にすばらしい。

オペラはパリのあとバルセロナでもやったようですね。見ることができなくてとっても残念!見た方のリポートを何件か読みましたが、アヒルがたくさん出てきたりして、大盛り上がりだったそうで、う〜〜ん、見たい〜〜。

な〜んて思っていたら・・・・


来日
のニュースを聞いた時は、本当に驚いてしまいましたね。ホンマかいなぁ〜〜。誰しもそう思ったと思います。クストリッツアさん、ドタキャン多いですからねえ、今でもわたしは危ういと思ってますよ。でも、その時はその時、それはそれで楽しいでしょ〜
とにかく、行くしかないでしょー、コレは、ということで、さっそくチケットとりましたヨ。東京ドームの敷地内にできた
「JCBホール」。新しくできたところなので、中がどんな風なのかわからなかったのですが、最近になって中の様子、キャパなどが発表になりました。3100人収容とか。ステージの作りは様々、可動式。でもって椅子が自慢らしく1脚10万円するらしいんですねえ・・・・でも、このバンドに椅子いるかなあ・・・・どうせみんな立っちゃうと思うんだけどね。スタンディングの形態もとれるのだけど、ガッチリ椅子は配置されてる模様。いいなあと思うのは、アリーナ席の一番後ろでも25m。ステージ近し。わたしのチケットは前から5列目。ワ〜オ、前だなあ!うれしい

さて、彼らの日本での認知度はいかに。
ヨーロッパでは彼らはたくさんツアーをしているし、とても人気のあるバンド(だと思う)ですが、日本ではクストリッツアさんがたくさん受賞しているといっても、さほど認知度高くないっぽい。旧ユーゴで有名な監督といえば・・・・日本では多分オシム監督ということになるんだろうね。わたしはオシム監督も大好きですよん。復活することを祈ってます。
がんばれ!オシム!

とにかく、たくさんの曲が聞きたいです。そして、まだ未聴の『ジプシーのとき』ノー・スモーキング・オーケストラ版が楽しみなんですね〜(現在発注中:まだ届かないのよね〜)
*(届きました〜4/3記)
(更新日:2008/3/30)



●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
・・・混沌・不条理・喪失感、しかしそこには人間への崇高なまでの愛がある。
限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。
新年あけましておめでとうございます。1ヵ月半もたってしまいましたね。今回は些細な疑問から湧いたバルカン音楽についてちょっと。といいつつ今回も長〜いいいいっよっ。05/1/8


第四回:新年ゆえに三段重ねの重箱をつつく:バルカン音楽
第三回目で、『「黒猫・白猫」のサントラって一体誰?問題』というのが発覚いたしました。これは前回のを読んでいただければわかることなのですが、かいつまんでもう一度書かせてもらいますね。パソコンのiTunesにこのCDを入れましたら、アーティストのところにコチャニ・オルケスター、またはノースモーキング・オーケストラ、(別のソフトでは単にサントラと出たりもするらしい)と出たことから混乱が始まりました。さらに映画のパンフレットやインターネットで調べた映画紹介のサイトでは、演奏しているのは「アンダーグラウンドでも演奏しているファンファーレ・チョカリーア」と書いてあるところが多い。
第二回では、こうゆうことは調べないわよ、関係ないし・・・なんて書いていたのですが、やっぱりこのあたりをキッチリしておかないと、どうも次へ進めない・・・という因果な性格。わたくし自慢のポアロひげをひねりながら(無いよ、そんなの)泥沼に片足突っ込んでしまったヘイスティングスくんと共にたまたま下高井戸シネマで上映していた「黒猫・白猫」とファンファーレ・チョカリーアのドキュメント「炎のジプシーブラス」を鑑賞に参りました。ヘイスティングスくんが調べたサイトや本などから随分いろいろなことがわかり、さらにバルカンのブラスバンドをダダダとおおまかなところを聞くに及び、当初の「関係ないね(柴田恭平で)!」的クールな態度もどこへやら、足を踏み入れてしまった以上トコトンやるべしと日夜ヒゲ面音楽とヒゲ面サイトに明け暮れたおかげで、最近になってようやく結論というのかまとめるまでに至ったのでありました。ふ〜

サントラCDにはキチンとミュージシャンの名前も出ているので、これを信用するならばコチャニではないし、ノースモーキング・オーケストラというのも、実は正しくない。ここにはいくつかの間違いが不幸なことにしち面倒臭く、まさにバルカン半島の落とし子と言っても良いほど入り組んでいたのでした。エミール・クストリッツアのインタビューでは、この映画の音楽はノースモーキングのメンバーが「Black Cat White Cat」というバンドを組んでコンポーズしてくれた、と語っている。「スーパー8」のおまけについているノースモーキングのPVを見るとドラム担当のクストリッツアの息子が持っている大太鼓には「Black Cat White Cat Band」と書いてある。このメンバーのほかにいろんなミュージシャンが作り上げているサントラ。普通に考えればコレでおしまいです。

iTunesのデータというのは、ボランティアで入れている人がいたり、アーティスト自身が自分で入れたりもできるらしいですね。自主制作アルバムだとたいていアルバム名もアーティスト名も出ないものですが、サボテンの自主制作アルバム「目覚める」はちゃんと出るんですよ。どなたか存じあげませんがデータを入れてくれた方ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。まぁ、こんなことはさておき、ヘイスティングスくんがこのアルバムのすべての曲のアーティストの詳細が出ているサイトを発見。その結果やはり「黒猫・白猫」のサントラはコチャニ・オルケスターではありませんでした。どこにも名前は出ていません。とても似ているスペルで「Kaljari Orchestra」というのがクレジットされています。『KocaniKaljari』・・・これかもヨ〜、間違えちゃった理由。
とゆうわけで、単にデータを入れた人が
間違えているというのが結論です。イヤハヤ、ちょっとここラでショコラでもいただこうかな。ズズズー

エルキュール松本が次の間違いに振り回されてしまっていたのは腹立たしくもありおもしろくもありました。これは、
「木に括られて演奏しているバンド」はノースモーキングのメンバーです。」と書いてあるものと、ファンファーレ・チョカリーアです、と書いてあるものがいくつもあったことについてでした(どこに書いてあったのかメモしてるわけではないのだけど・・・たくさん見たような気がする。ひとつはナントあとで知ったのですが、映画のパンフレットです!)。そのほかに、「ゴッドファーザーの家の池のまわりで演奏している」のはファンファーレ・チョカリーアで・・と書かれたインターネットでの映画レビューも発見しており、映画に出て来るバンドや音楽にはどうしても素通りできない体質のため、ここはどうしてもハッキリさせたかったのでありました。
なんでも鵜呑みにしてはいけないということを感じました。特にバルカン関係は・・・

コチャニ〜〜なのかファンファーレなのか?というiTunesデータの疑問もまだ解決していない(どちらでもなかったのですが)第三回目の時点では
『それぞれのアルバム買って聞けばわかるのかなぁ。顔写真見比べれば判別するかなぁ・・・。』と書いていましたが、この1ヵ月半でそれぞれのアルバム聞きました。さらに名前が頻繁に出て来るトランペッター、ボバン・マルコヴィッチのものも聞きました。日本では一番有名だと思われるロマバンド「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」も聞きました。映画「炎のジプシーブラス」も見ました。『見る』ということは一番ハッキリしますね。
しかしやはり入り組んでいる上に
絶対的に情報源が少ないため、エルキュールといえども解決策はもはや消去法しかなかったのでありました。


「黒猫・白猫」の2シーン。この人たちは一体誰じゃ!?村の普通のオッサンかも・・・





Fanfare Ciocarlia
「Iag Bari」これお薦め



Kocani Orkestar
「Gypsy Mambo」こちらには金管楽器のほかにアコーディオンも入っていますね。


Taraf De Haidouks
「Band of Gypsies」こちらはおまけ。
映画「ラッチョ・ドローム」でブレイク。ジョニー・デップ(また出た!)主演の映画「耳に残るは君の歌声」にも出ている。これもサントラは素晴らしい。DVDでは、タラフの演奏シーンがたっぷり見られます。お薦めです。
歌い方やアレンジ、どこかキューバ風でヴェナビスタ・ソシアル・クラブを思い出してしまいました。味のあるヴォーカルが良いです。

「炎のジプシーブラス」Fanfare Ciocarlia のドキュメント映画「炎のジプシー・ブラス/地図にない村から」目出たく昨年2004年12月7日に見ることができました。その三日前には「黒猫・白猫」もスクリーンで見ることができました。映像というのはやっぱり一番力があるんじゃないかとこの時ほど思ったことはないですねぇ。「炎のジプシーブラス」では14人のファンファーレ・チョカリーアのメンバーが出て来ますが、しっかり顔覚えてしまったので、疑問の一つであった「黒猫・白猫」で木に括られているのは誰?の答が出ましたねー。この人たちじゃなかったで〜す!鬼の首でもとったように喜んでるわけじゃないですよ、ホントに。ただ、あまりにも違いすぎるんですよ。間違いは誰にでもあるけれど、少し気を入れて調べればすぐにわかることなのに、どうしてこうゆうことになるのか、ちょっと信じられないです。
とりあえず一つ消去されました。

このようなことでも調べることでたくさん音楽を聞いて、映画を見返して、本を読んでの毎日で、とても楽しかったんですよ。こうゆうことには燃えるもんなんですよねぇ。中学高校の頃はこうゆうことやってるとたいてい親に「その情熱を勉強にむけなさいよ!」なんて言われるんですよねー。


間違いは顔だけではなく
楽器の編成を見てもわかるようになりました。ここからがおもしろいんですよー!あれ、おもしろくない?おもしろいんだってばぁ・・・。
ファンファーレ・チョカリーアの人たちはすべてが
マウスピースのある金管楽器です。CDではリード楽器(サックスやクラリネット)も入る曲もやってますが、ゴッドファーザーの家の池のまわりで演奏しているバンドはほとんどがギターを持っているのです。ギターを弾く人はこのバンドには、というかこのバンドのいる村にはひとりもいないのです。というわけでこのシーンのバンドもファンファーレ・チョカリーアではないことが歴然としているのでした。だからといってそれが誰かはやはりわかりません。もしかしたらファンファーレ〜〜の人がギター持ってるかもしれないしねぇ、そこんとこは本当にもぅわかりません。

さらに、左の2シーンのバンドがこの映画の音楽担当の「ノー・スモーキング・オーケストラ」のメンバーであると書かれているものも多いのですが、これも違うと思います。これについては下の方になお!しつこく!書いてますので、そちらまでがんばって読んでくだされ。

「黒猫・白猫」は3人以外は出演者の全部がしろうとさん。これ凄いですねぇ。というわけで、もしかしたら木に括られているブラバンマンも、病院で演奏しまくるブラバンマンもみんな本物のしろうとジプシーさんなのかもしれません。もしくは、違うオーケスターの人たち。これが最後の結論です。

ジャケットを見るだけでも楽しいバルカンの代表的バンドのCDの紹介します。楽器が良くわかりますね。

「Iag Bari」はファンファーレ・チョカリーアの3枚目のアルバムです。映画「炎のジプシーブラス」では、このアルバムを作るための練習などのシーンも出て来ます。CDの最後の曲は「黒猫・白猫」の『テントウムシ』です。ほかの曲もすばらしいですので、「アンダーグラウンド」で興味を持った方は聞いてみてね。『テントウムシ』が入っているので混同してしまうかもしれませんが、いろんなバンドが同じ曲をしています。

「Gypsy Mambo」はコチャニ・オルケスターのアルバム。これはわたしはあまりおもしろくなかったんですけど、一応ご紹介ってことで。ついでに映画「ジプシーのとき」のサントラに『Kocani Orkestar』が入っているかどうかですが、ライナーに詳しく書かれていないのでやはりよくわからないですが、多分入ってません。おそらくは、村での結婚式で演奏しているジプシーバンドが彼等なのだと思います。
彼等のCDジャケットを見ると、アコーディオンが入っていますね。クラリネットなどのリード楽器も入っているようで、ちょっと洗練された感じにわたしには聞こえます。

「Band Of Gypsies」は日本では多分一番有名なロマバンドだと思いますが、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのアルバム。このバンドはファンファーレ・チョカリーアと同じルーマニアのバンドで、なんとなく似ているのですが、楽器の編成はヴァイオリンとアコーディオンが中心です。このアルバムでは上のKocani Orkestarと一緒にライヴをしています。管と弦が合わさって厚みのあるサウンドになっているので、あまりこうゆうのを聞いた事がない人にも聞き易いかもしれません。良い曲がたくさん入ってると思います。ただ、ベースがねぇ・・・わたしなんぞはこんなの無くてもいいのに、と思ってしまうんですが、ちょっと調子っぱずれで退屈なベースライン。

ジプシーの音楽といってもいろいろです。地域的にみても範囲は広いです。わたしが好きなのはルーマニアのもの、またはボスニア、セルビアのものになるのかな。そして、ゴラン・ブレゴヴィッチのアレンジした音楽なのだなあと思う今日この頃です。

西洋の香りのするジプシー音楽。関口義人さんの本「バルカン音楽ガイド」という本を読んだり、ファンファーレ・チョカリーアのメンバーのインタヴューを読んだり、ネットで関連の読み物を読んでわかったのですが、ルーマニアでのブラスバンドが発達したのはこのファンファーレ・チョカリーアの住む村のあるモルドヴァ地域に限られているのだそうです。詳しいことはまたしても面倒なため割愛(不親切)。ようするにこの地域にはドイツ人、オーストリア人、ハンガリー人が住んでいて、1920年ころの北ヨーロッパのブラスバンドブームでジプシー達にも影響があったということらしい。ボスニアやセルビアあたりもそうで、やはりチェコ人やオーストリア人のブラスバンドが人気を博したそうで、この影響が多分にあるのだということをサラエボ生まれのヤドランカさんが語ってるんだそうです。(ほとんど関口さんの本に書いてあったことですが)
な〜るへそ。1920年ということは第一次世界大戦のあとということになりますね。戦争を肯定なんぞしませんが、十字軍の昔から戦争は異文化を良くも悪しくも混ざりあわせてきました。多分、このあたりから西洋の金管楽器が入り込んだのではないかと思います。映画「炎の〜〜」を見ると、昔からある民族楽器は全く使われておらず、すべて西洋の金管楽器なんです(元を辿ると違うのかもしれませんが、現在の形としては)。これらは値段も高いと思いますが、映画にはこれらの楽器を直す仕事をしている爺さんも出て来ます。ガンガン叩いて直してました。

ルーマニアのモルドヴァ地域は一番貧しい地域なんだそうです。とかなんとかこのあたりは「炎のジプシーブラス」の映画パンフレットに載っていたメンバーのインタヴューを参考にしてます。彼等の仕事は結婚式などに呼ばれての演奏ですが、チャウシェスクの時代はミュージシャンという職業は認められていなかったそうで、彼等も工場で働いていたのだそうです。革命後はだいたい農業のくらし。革命後の方がさらに貧しくなったそうです。なわけで、彼等が言うには農業で無骨な手をしてるんでヴァイオリンのような繊細な楽器にはむかないんだってサ。それからリード楽器もお金がかかる。だから、マウスピースさえあればできる金管楽器を選んだって話しがおかしかった。
上で書いたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスは同じルーマニアでもブカレスト郊外の村クルジャ村出身。こちらはヴァイオリンが半分くらい占めているから、そんなに貧しくなかったのかもね。とにかく、村の男100人中85人がブラスミュージシャンだというファンファーレ・チョカリーアの村は特異ですよね。おもろいっ

ところでコチャニ・オルケスターの「Gypsy Mambo」がわたしはどうも好みではないと上で書きましたが、これは多分メインのリード楽器が感じでベタっとした感じで、しかもソロで吹く場面が多く、さらにさらに、この西洋の楽器でインド風の旋律を吹かれてしまうとアッシにはどうも苦手なんですねえ。唐突ですが、音楽ちょっとやってるわりにはあんまり詳しくないんですが、「チンドン」って何なんでしょうねぇ。わたしはアレちょっと苦手なんですよ。リズムも好きじゃないし、節回しもどうもねえ・・。なぜかサックスとクラリネット使うけど、なんでだろう。あれはどこからやってきたのでしょうか・・・。ファンファーレ・チョカリーアのブラスは「Iag Bari」ではリード楽器(ゲストの方がやってるんだと思いますが)もスピード感があり、ソロでニンマリやるところがないのが良いです。歌もベタベタせず素っ気無いのですが暖かみがあって好きです。マウスピースの金管楽器というのは経験がないので想像だけですが、音を出すのに力、というか瞬発力が必要なんだと思うので、柔らかいニュアンスが難しい。複数で演奏するとさらに難しいので、俄然マーチングバンドのように清清しくなる。トランペットやトロンボーンはジャズになるとぐっと精神的になるけれど、最速で演奏されるファンファーレ・チョカリーアのトランペットにはそういったものはナーイので、わたしとしてはこうゆうバンドにはこうゆう方が気持ち良いと思えるのでした。あ、何言ってるのか段々わからんようになってもぅた。ショコラ、ショコラ。ショコラといえばジョニー・デップが出た映画「ショコラ」では、彼はジプシーの役でしたね。自らドブロギターを弾いています。たしかジプシーの血が流れてるんですよデップさんは。この映画のサントラにもデップさんのドブロギターの演奏が入っています。

◆ここらでちょっとエミール・クストリッツア映画のサントラを整理しましょ。◆


ジプシーのとき

Temps des Gitans
1989

「ジプシーのとき」

1.Ederlezi [Scena Durdevdana Na Rijeci] [Sce de la Fe de la Saint Geo
2.Scena Pojavljivanja Majke [Sce de l'Apparition de la Me]
3.Scena Perhanove Pogibije [Sce du Meurtre de Perhan]
4.Kustino Oro [Ronde Populaire de Kustin]
5.Borino Oro [Ronde Populaire de Boro]
6.Glavna Tema [B.O.F. Kuduz]
7.Tango [B.O.F. Kuduz]
8.Pjesma [Chant]
9.Talijanska [L'Italienne]
10.Ederlezi

最近なかなかCDショップでは手に入らなくなったCDです。通販だと購入しやすいです。6と7の曲は「Kuduz」という映画のものです。「Ederlezi」はゴラン・ブレゴヴィッチの代表曲といっても良いと思います。大変きれいな曲で、様々な人がその後演奏をしているようです。日本でも元たまの知久さんやチェロの坂本さん(なんじゃ!二人ともパスカルズじゃん。まぁ、こうゆうのお好きそうなバンドですわよね)なども演奏しているみたいです。


The Klezmorim : First Recordings 1976 - 78

「R.Crumb and The Cheap Suit Serenaders」1974

今回のおまけ。「クレズマー音楽」というのがありますね。
これはやはり中東からヨーロッパにかけての少人数のバンドの音楽で、ヴァイオリンやクラリネット、アコーディオンなどを使うし、曲も同じものをやっていたりなのでジプシー音楽と混同してしまいそうですが、こちらはユダヤ人の音楽です。ファンファーレ・チョカリーアがやっている「ルメニ・ルメニ」という曲などはクレズマーバンドでも演奏されているようです。日本でもこういった音楽をやっているバンドは多いです(のでツッコマないでね)。移動しつつ世界中の音楽を身につけて広がっていった音楽です。
左の上のCDは「クレズモリム」というバンドのCDです。ジャケットは、ジャニス・ジョプリンの「チープ・スリル」のジャケットや、「フリッツ・ザ・キャット」、日本の雑誌「宝島」のイラストでお馴染みのロバート・クラムのイラストです。かわいいですね。クラムはみずからもジャグ・ラグ・ブルース・オールドジャズ風バンド「ロバート・クラム&チープスーツセレナーダズ」でバンジョー弾いてますから、こういった音楽は好きなのでしょうね。

UNDERGROUND
1995

映画「アンダーグラウンド」1995については、いずれ書くのでここではサントラの紹介だけにとどめます。音楽は「ジプシーのとき」「アリゾナドリーム」に続いてゴラン・ブレゴヴィッチ。映画の最初っからカオスな結婚式シーンなどずっと演奏しているのはファンファーレ・チョカリーア。(のハズですが、だんだん疑心暗鬼になってますので、これもいずれちゃんと鑑賞しなおすことにします)
Boban Markovic(ボバン・マルコヴィッチ)は自らのオーケスターを率いるトランペッターで、この映画でもこのオーケスターで演奏をしています(これも違ってたりして)。2001年にはグチャ村のブラスフェスティバルで最優秀トランペッターに選ばれた(凄い名誉らしいです)方。今では世界的で、アルバムも何枚も出ています。


「World of Gypsies」
第三集

Boban Markovic さんの演奏する「Ederlezi」を聞くことができます。
1500円のシリーズで、ドイツ、フランス、スペイン、ルーマニア、ブルガリアなど広範囲に渡る音楽が聞けます。それぞれ全然違うのでおもしろい。ファンファーレ・チョカリーアの「Iag Bari」も入ってます。バルカン関係、詳細不備・不明のCDが多いなか、ブックレットも充実してます。

 

BLACK CAT
/WHITE CAT

1998

「黒猫・白猫」998の音楽についての詳しい情報はコチラのサイトに演奏者リストが載っています。
http://www.trackserver.com/details/21971/20198501.htm
「ノー・スモーキング・オーケストラ」のDr.ネレやヴァイオリンのダヤンさんらが中心のようですが、バンドというかオルケスターとしては「Salijevic's Trumpet Orchestra, Boban」(これはボバン・マルコヴィッチさんのバンドなのでしょうか?)ともうひとつ「Kaljari Orchestra」というのが全曲にわたり入っています(CDにはどちらの記述もありません・・)1998年の映画ですが、音楽担当の「ノー・スモーキング・オーケストラ」はこの映画の曲をたくさんフューチャーしたアルバム「UNZA UNZA TIME」を2000年にリリースしています。この「ノー・スモーキング・オーケストラ」の元になっているバンドは「Zabranjeno Pusenje」ザブランイェノ・プシェンイェと言います。このバンドの変遷については前述の「バルカン音楽ガイド」に詳しく書かれていましたが、どうも釈然としない思いが残ります。というのも、メンバーもしょっちゅう変わっているし、途中1995年ころには二つに分裂。しかも喧嘩したわけでもないとか。これはコチャニ・オルケスターも同じで、どうも喧嘩したわけじゃないけど同じ名前で平気で分裂、演奏者もはっきりしない、でも別にそうゆうことはどうでも良いみたいなんですねぇ。日本人はこうゆうことに几帳面すぎるのかなぁ・・・。
木に括られている人たちが「ノー・スモーキング・オーケストラ」の撮影当時の7人のメンバーである、と映画のパンフレットには書かれていますが、いるはずのDr.ネレもダヤンも、ネレのお兄さんで89年ころからザブランイェノプシェンイェに参加していたキーボードのドラゼン・ヤンコヴィッチの顔も何度見ても見えない。パンフレットの記述が正しければ、可能性の最後のひとつは、もうひとつのザブランイェノ・プシェンイェのメンバーということになる。しかし、いくら喧嘩わかれしたわけではないとはいえ、明らかにノー・スモーキング・オーケストラの演奏の映画なのだから、そうゆうことはあり得ないよねぇ。もうひとつの可能性としては、CDに全曲参加しているオルケスターのどちらか。これに関してはもぅわかりません。この人たちの顔までもぅ調べられません!それから、池の回りでの曲は「Jek Di Tharin」というギターのきれいなバラードですが、この演奏はどう聞いてもノースモーキングの演奏と歌で、ファンファーレ・チョカリーアではまったくの間違いだとハッキリしてますが、ほかのオルケスターともどうしても思えません。
と、グチグチと語ってまいりましたが、木と病院のシーンのバンドはやっぱり村のオジサンたちなんですよ、コレで決まりだなっ!もしもハッキリ知っている方がいましたら、教えてください。

バルカン問題は、先に書いたように入り組んでまして、しかも今でもあまりちゃんとした資料がないためにハッキリしないし、現地の人はきっと多少の間違いや、分裂などどうってことなく平気でくらしているのではないかと思います。資料もほとんどない中適当なことを書いてしまう人はどうかと思うのですが、もしかしたら、レビューやライナーを書いた人も平気で間違っている資料を信じて書いたのかもしれず、これはもぅショーガナイのかなあ、とも思ったりします。


サラエボといえば、エミール・クストリッツアとゴラン・ブレゴヴィッチのふるさとです。ボスニア人のエミール、セルビア人のゴラン、こういった話しになるともぅお手上げです。どういった確執が存在するのかもぅ理解できませんが、「アンダーグラウンド」では、原語でわかる人にとっては何語で話しているかがとても問題だったらしく、字幕スーパーで見るしかないわたしにはそのことでこの映画を判断したりはできないし、かえってできないことを良かったと思ったりします。そういったことの理解がなくても「アンダーグラウンド」は立派に自立しているから良いのです。「バルカン音楽ガイド」を読むと、この二人の実情や現地の人の反応などが書かれていて興味深いのですが、もぅこのコンビは無いのかもしれないと思うと寂しい感じがします。「ノー・スモーキング・オーケストラ」についてもくわしく書かれています。なかなか複雑な思いがしてしまいました。
世に何かを問うためには、世に出ることは大事で、そのための演出も必要なのだと思います。それで、批難があったとしても、作品自体に卑しさがなければわたしは良いと思っています。クストリッツアとブレゴヴィッチに対するバルカンでの批難は、遠い国にいるわたしにはなかなか理解できないものなのですが、どちらの作品にも卑しさを感じない、というよりむしろ品の良さを感じるので、わたしにとってはやはりすばらしい表現者です。

つーことで、今回はこれでおしまい。あー、スッキリした。(スッキリしないとか、なんなんだよ今回の話しはよぉ〜と不満な方は、その内行われる予定にしております「バルカン・オフ・オフ話で遊ぼう!」(ただのお茶飲み会だったりして)の会へどうぞお越しください。ヘイスティングスくん協力ありがとう。エルキュール松本、今回はチト疲れましたが、充実した内容だったと確信しております。
(更新日:2005/1/8)

●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
・・・混沌・不条理・喪失感、しかしそこには人間への崇高なまでの愛がある。
限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。今回はやっと見ることができた「ジプシーのとき」のお話
です。またも長いよ。04/11/19(04/12/7追記あり)

第三回:涙がじわっと流れ出る映画
第二回目では、「黒猫・白猫」がBEST-1だ!と豪語しましたが、ふにゃらふにゃらと気持ちがふらついております。でも、こうゆうことが起こる事は充分承知の上で書いてますよ〜ん。だって、インターネットの文章だもの、こうゆうのこそリアルで良いのじゃないの?とわたしは思っているのです。用意周到に資料全部揃えてからうまくまとめましょう、という資料的解説文を書く気はまったくないのでございます。自分が楽しいように書いています。興味が湧いた方は是非ご覧になってみてください。責任はとれませんけど。

『ジプシーのとき』はクストリッツア監督35才の時の3作目の映画です。なんとゆうかじわじわと胸のあたりが苦しく滲んでくるような、そんな映画でした。何故か見終わったあとでも、思い出して涙がじんわり出てきてしまう。こんな映画は珍しいと思いました。要所要所にフーッと入ってくるジプシーの女の歌声と素朴なアコーディオンの曲が流れるだけで、もぅいけませんです。実はこの映画の存在自体を知ったのはたった数年前のことで、「アリゾナドリーム」を見たあと音楽のゴラン・ブレゴビッチ繋がりで知ったのでした。東欧好きの友人から私的音楽増殖物サウンドトラックを頂いたのは2年前。聞きましたねぇー、随分。これはMDでしたが、アリゾナドリームのイギー・ポップの主題歌の入ったMDと共に、マイ・フェイヴァリット・増殖物MDボックスに入れてます。なかなか手に入らないものだったので大事にしていましたが、1年程前に「アリゾナドリーム」のサントラは廃盤だったのが何故か復活していて、さっそく買い求めました。「ジプシーのとき」はMDで満足していたのと、ことあるごとにサントラコーナーは見てましたが、見た事がなかったのでそのままになっていました。最近この連載を始めた頃になって、CDで欲しいと思うようになりましたが、捜してみたら、ネットではたったの1件しか扱っている店はありませんでした。バルカン関係の店でした。現在取り寄せ中。サウンドトラックについてはCDが届いたら書くことにします。ここでも『コチャニ・オーケスター』というマケドニアのブラス楽団が登場です。すばらしくきれいなヴァイオリンの曲などもあって、聞くほどに切なくなります(訂正:この曲はゴラン・ブレゴヴィッチの別の映画の曲でした)

ゴラン・ブレゴビッチの曲は感動的で、仕事中BGMで流していてもフッと聞き耳をたててしまうのでした。東欧好きの友人は勿論この映画、映画館で見ていました。さっそくパンフレットを見せてもらったので、写真などでイメージを勝手に膨らませていました。実際は思ったよりも複雑でしたけど。
写真と音楽だけで膨らんでいたイメージはユーゴのジプシーの日常生活のドキュメントのようなものと捉えていました。

《公開時のコピー》
漂泊の民 ジプシーがたどる 夢と幻の日々

なんですよ。
そういわれればそうだけど、その奥には信じること、約束すること、やさしい気持ち、誰かを大事に想うこと自己犠牲など、そういった人間の捨てようにも捨て去ることのできない愚かしい暖かみが岩のように動かずこびりついている。こうした感情はどれも人間と交わることでおこるもので、だからこそクストリッツア監督の映画は難解にならないのだと思います。誰もが持っている感情だから。

[疑問:どなたか教えてください]


Fanfare Ciocarlia
Kocani Orkestar
ほ〜ら、どっちかわかんないでしょ

ところでクストリッツア作品に欠くことのできないジプシーブラス・バンドについてここで新たな疑問が生じております。第二回「黒猫・白猫」の音楽のことを書いたところで、「アンダーグラウンド」と「黒猫・白猫」はファンファーレ・チョカリーアというバンドが演奏している、と書きました。実際にサントラCDには一言もその演奏者の名前は書かれていません。わたしの拙いインターネット検索でいくつもそう書いてあるのを発見したので自信たっぷりに書きました。最近iPodを買い求めたわたしは、さっそく「黒猫・白猫」をiTunesに入れました。転送されたiPodの表示を見たら演奏者は「ジプシーのとき」で演奏している(とされる)『Kocani Orkestar』と出てくるんですよ!コリャどうしたことだ!「黒猫・白猫」のサントラCDには音楽はDr.ネレほか二人の名前しか書かれておりません。演奏はノースモーキングとブラスバンドということは聞けばわかるのですが・・。
「黒猫・白猫」はファンファーレ・チォカリーアなのかコチャニ・オーケスターなのかどっちよっ!だいたい、それぞれのアルバムも聞いたことないし、顔もみんな似たようなヒゲ面だし(あちらからしたら中国人も日本人もみんな同じ顔に見えるんだろうけど)、わたしには判別できませんのよぉ〜。それぞれのアルバム買って聞けばわかるのかなぁ。顔写真見比べれば判別するかなぁ・・・。あー、しかし、そこまで深入りしたくないのよぉ〜。どなたか知っていたら教えてください。よろしくお願い致します。「黒猫・白猫」で木に括られているのはドッチ?

見た目からすると、村中がブラスバンドというファンファーレ〜の方が土着的な感じしますがどうなんでしょか。
「ジプシーのとき」のサントラCDが届いたら、さらに音楽については書くことにします。


おまけです。
Fanfare Ciocarlia のドキュメント映画「炎のジプシー・ブラス/地図にない村から」
日本公演の模様もあるらしいです。渋谷ハチ公前のゲリラ演奏がおもしろいらしい。こうゆう映画はレイトショーが多くて早寝早起きのわたしには見にいかれません。
残念っ!
(2004年12月7日、下高井戸シネマにて念願かなって見ることができました。上の疑問についてハッキリ言い切ることはできませんが、『黒猫・白猫』はファンファーレ・チョカリーアに間違いないと思います。(ゴメンナサイ、これも違いました。)でも、映画で木に括られているのは、この方達ではないです。ひとりも一致しないです。これについては第四回をお読みください。)


あらすじってものをそういえば第一回目からまったく書いてませんでしたね。そうゆうのはチト面倒なので、どこからか引用しちゃいたいのですが、検索するとすぐに出てきますので、そっちで見てね。いろいろ不親切ですみません。いずれ時間ができたらどこかに加えます。

セリーヌ『夜の果ての旅』は、わたしのぼろい本棚の一番良い場所に置かれている本です。ハタチ頃生田耕作の訳で文庫本が出て(オ、歳がばれル)、すぐに読んだ。吐き捨てるような口語調の文体と暗くドロドロした旅は救いようもないものでしたが、上下巻一気になだれ込むように読んだものでした。思えば、このリズムと音楽を感じさせる文体(といっても原文がどうなのか知るよしもありませんが、生田耕作さんの訳を信じて)はアメリカのビート作家よりももっと過激でいてそれでいて品位があったような気がする。言葉が汚くても品性とは関係ない。それは精神が高潔であるかどうかによるからだ。セリーヌ自身はもしかしたらそんなことすら「バカバカしい!」と思っていたかもしれないけど。このロックを感じさせる作家のこの作品をクストリッツア監督が「その虚無的なところがわたしにとって”感じる小説”であった。物語の構成に魅了された。脚色は不可能に近い、にもかかわらずわたしは試みつづけ、「アリゾナドリーム」「ジプシーのとき」ではかなりうまくいったと思う」(「アンダーグラウンド」DVDのブックレットより。変な訳だったので多少手直ししました。)と語っているのを読んだ時、ポンと膝を打ったのでした。そうだ、この2作品は、青年の、決してどこにも辿り着く事のない『夜の果ての旅』の物語なのだ!
ガンガン進む物語の構成だけではなく、きっと、そのリズム感溢れる文体や何度も登場する川の場面にクストリッツア監督はうっとりしたのではないかと思うんです。

ファンとしては、わたしの本棚と同じようにクストリッツァ監督の本棚にも「夜の果ての旅」の横あたりにヘンリー・ジェイムス「ねじの回転」やギュンター・グラス「猫と鼠」などが並んでいると嬉しいんだけどねー。

(セリーヌ「夜の果ての旅」生田耕作訳。一時廃刊。復刊後は「夜の果てへの旅」となっています。)

DVD化されていない!さらにはヴィデオは廃盤になっている!と教えてもらった時には目を疑って(メールで教えてもらったので)しまいました。クストリッツアの作品はそのほかはすべてDVD化されているし、「ジプシーのとき」はカンヌでは最優秀監督賞とロベルト・ロッセリーニ賞までとっているのに・・・。何か政治的なものが絡んでいるのかしらん?理由はまったくわかりません。DVD化されるようにするにはどうしたら良いのでしょうか?誰に言えばいいのかな?(渋谷のTSUTAYAには現在2本ヴィデオがあります。今がチャンス。ただし1本は相当画質が悪いようで、そのように注意書きされています)


ジプシーのとき


上映時間 126 分
製作国 ユーゴスラビア
公開情報 ヘラルド・エース=ヘラルド
公開年 1989

監督: エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
製作: ミルザ・バシッチ
製作総指揮: ミラン・マルティノヴィッチ
脚本: エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
ゴルダン・ミヒッチ Gordan Mihic
撮影: ヴィルコ・フィラチ Vilko Filac
音楽: ゴラン・ブレゴヴィチ Goran Bregovic
 
出演: ダボール・ドゥイモビッチ
ボラ・トドロビッチ

どちらが表で、どちらが裏か、と思うのは、この35才の時の作品「ジプシーのとき」と45才の時に作られた「黒猫・白猫」。あまりにもたくさん同じアイテム・シーンが使われています。段ボールに中に入って移動して遊ぶ子ども達。「黒猫・白猫」では花嫁の脱走に使われます。「ジプシーのとき」では、主人公ペルハンをだまして逃げた首領アーメドがペルハンに復讐されるのはトイレの中で、「黒猫・白猫」でも小悪党ダダンへの復讐はトイレの中でした。前者では真面目に描かれているシーンは、後者ではことごとくコメディになっています。村を歩きまわる鳥たちや犬たち、花嫁のベールやハイヒール、悪党の白いスーツ、賭け事、豚、これらは二つの作品に出てくる共通アイテム・シーンでございます。一体全体これはどうしたことだろう、と始めは思いました。パロディなんだろうか・・・。
ただ単にクストリッツア監督はこれらのアイテムが好きだからこの二作品に重なるように使った、というのではない、とわたしは思っています。それだけだったら、この二作品の間に作った「アンダーグラウンド」にもそれらが使われても良いハズですが、「アンダーグラウンド」には白いスーツの小悪党もトイレの復讐も段ボールも出てこないのです。
35才で描いたジプシーと、45才で描いたジプシーと、きっとその10年の間の経験が描き方を変えたのだと思うのです。人生の表と裏なんだと思います。「ジプシーのとき」は重みのある、生きるしがらみのようなものを真摯に描いた作品だと思いますが、「黒猫・白猫」はそのしがらみから一歩前進できるようになった「自由」が描かれ、それは途中「アンダーグラウンド」という大作の制作を挟んだからなのだと思う。どちらが表で、どちらが裏か・・・。お軽いコメディが裏のように一瞬思いますが、次世代の若者たちが勝ち取った「自由」を高らかにかざした「黒猫・白猫」が
誇り高い表の作品なのだとわたしは思っています。
どの作品にも共通するのは
花嫁のなびく長いベールです。

天を気高い気持ちで仰ぐためには・・・地に這いつくばるのがよい。クストリッツア監督の映画ではカメラが随分下の方にあることが多い。この仰ぎ見る、という角度が崇高さを増すような気がする。前述の「アンダーグラウンド」DVDブックレットによると、クストリッツァ監督はシャガールが好きなんですよね。どの映画にも繰り返し繰り返し空を浮遊する花嫁が現れます。

シャガールの絵にはシャガールと奥さんのベラが抱き合っている絵がたくさんあり、二人仲良く飛んでいたりします。どちらかというとベラの方が飛んでいます。ミューズなんだなぁ。長いベールをしているベラもいます。また、飛んでいるベラの下に小さな楽隊が描かれているものもあります(右の絵がそうです)。
天に浮ぶシーンは頻繁に現れますが、「ジプシーのとき」では妹が車の中から見る花嫁姿の亡きおかあさんの浮遊シーンと、主人公ペルハンの悲しい花嫁アズラがグググと宙に浮き上がる出産シーンは印象的でした。どちらも長いベールがキュンとなります。
特にアズラの出産と死のシーンでは思わず涙が出てしまいました。

(マルク・シャガール「二つの顔を持つ花嫁」)

美しい遠景はクストリッツア作品の特徴だと思います。どの作品も素朴で、どこまでも続く丘や畑や川が淡い色彩でボウッと映されていますが、そこにうごめく動物達や人々が生き生きとしています。どんな悪党が前面に映し出されていても、遠景ののどかさに悪意が和らいでしまいます。「ジプシーのとき」では、ジプシーのお祭りのシーンでも何故か涙がでます。せりふはありません。川に集まる人々の様子をスケール大きく映し、小舟に横たわる可憐な少女と少年を映し、ジプシーのおばあちゃんの涙を映すのみです。そこに物悲しい歌声が・・・。これでグラッときちゃうんだなぁ。
この美しく幻想的な映像、撮影者は一体誰か。気になるくらいカッコいい。撮影はやはり「パパは出張中」「アリゾナドリーム」「アンダーグラウンド」(それから未公開作品の初監督作品「ドリー・ベルを捜して」も)と同じ
ヴィルコ・フィラチという方でした。

の出るシーンは何度となくあるのですが、涙も引っ込むほど極めつけの崇高なシーンは、ペルハンが最後に天に見る白い鳥です(飛べない鳥が好きですね。飛べない鳥が高く飛んだら感動的です)。これが小さなかわいい小鳥だったら感動も半減したところですが、クストリッツアさんがそんなミミッチィことするわけもなく、そりゃあもぅ立派な巨鳥(白い七面鳥だったと思います)が舞うのでした。そうそう、そうじゃなくっちゃイケマセン。
(更新日:2004/11/19)



●松本里美の Hey ! Emir Kusturica●
・・・混沌・不条理・喪失感、しかしそこには人間への崇高なまでの愛がある。
限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。今回はロックな映画と「スーパー8」「黒猫・白猫」のお話
です。長いよ。04/11/12

第二回:すべてはバンドからはじまる
第一回目で書いた「アリゾナドリーム」にはジョニー・デップ、ヴィンセント・ギャロが出演していましたが、このお二人ともロッカーでもあり。ジョニー・デップは「ショコラ」では嬉しそうにドブロギターを弾いてますね。イギー・ポップは主題歌を歌ってます。たまたまかもしれないけれど好きな映画にはロックが絡んでいることが多いかも。
「アリゾナドリーム」の音楽はクストリッツア監督と同郷の
ゴラン・ブレゴビッチ。この方も旧ユーゴでは人気の(10年の間に10枚のアルバムを出している!サボテンは10年に1枚なのよ)ロックバンドの人とか。
クストリッツァ監督との出会いはバンド繋がりだったそうで、クストリッツァさんは最初はベースギターの人でした。


映画や音楽の出会いはどこから入ったかによって見え方が変わってきますが、わたしは「アリゾナドリーム」はジョニー・デップとイギー・ポップのデップ&ポップ(これいいね)コンビから入りました。それだけでもロックで良いわーと思っていたけれど、蓋を開けてみたら監督から音楽担当から俳優からことごとくロックバンド出身ということがわかって、スンバラシイ!と思ったわけです。
いきつくところはココだろう・・・、と気持ちを新たにしました。


基本はロック!これはサボテン座右の銘ですが、すべてにおいてこれは言えるのでございます。エミール・クストリッツァの映画の音楽は、映画を3倍すばらしいものにしていると思います。このあたりフェリーニとニーノ・ロータとの関係が良く引き合いに出されるようですが、現代においてはエミール&ゴランが最もしっくりしたコンビだと思います(他知らないけど)。しかしながら、今回はこの圧巻コンビの話しではなくて、もっとくだけた音楽担当者についてお話しまっす。それはエミール・クストリッツアとノー・スモーキング・オーケストラです。笑える良いバンドです。

「エミール・クストリッツアとノー・スモーキング・オーケストラ」の歴史などはどこかのサイトで見てくださいね。解説は面倒くさいのでしないのピョン。クストリッツア監督がメンバーになる前から活動しています。ヴォーカルのドクトル・ネレ・カライリチが率いていますが、今はクストリッツアが冠ですね、これはどうゆうことなのか知りませんが。元はパンクバンド。どうもこのDr.ネレはニール・イネスとかぶってしまうんだけど・・・これはまたいずれ書くかもしれません。

「黒猫・白猫」、にいきなり話しは飛んでしまうのよ。この映画の音楽を担当したのがノー・スモーキング・オーケストラなもので。実際にかかわっているのはメンバーではDr.ネレとヴァイオリンのダヤンです。
順番で言うと6作目の映画です。その前の大作3本「ジプシーの時」「アリゾナドリーム」「アンダーグラウンド」は圧巻エミール&ゴランコンビによるものでした。クストリッツア監督は「アンダーグラウンド」で一時政治的な批難にあい、引退宣言をするのですが、その翌年に思いなおして撮ったのがこの「黒猫・白猫」。
ハッキリ言って今のところこの映画がわたしの
BEST-1です。「アンダーグラウンド」じゃないの。ただ、「アンダーグラウンド」を見てなかったらこの映画も見てないし、この1作で充分クストリッツアファンになっていたと思うので、「アンダーグラウンド」は別格ということにしておきます。
コメディが好きなんですよ。この映画最初に見たのは、忘れもしない、今年の9月のことで、ライヴに行く前に時間があったのでヴィデオで見たんです。大笑いして出かけました。そのあと中央線に揺られながら
ジャン・ヴィゴの「新学期操行ゼロ」を思い出してました。好きな映画は?と聞かれるとたいていこの映画と言ってます。マルクスブラザースの「我が輩はカモである」と言うこともありました。サボテンが入っている「くっついて安心」の中のブックレットでは全員好きな映画は何?と質問されていますが、この時はわたしは「我が輩〜」の方を応えてました。コメディが好きなんです。
3つの共通点はと考えてみましたが、多分「混沌」なんだと思います。

「スーパー8」は「黒猫・白猫」と一緒にヴィデオを借りてきていました。
順番はこちらが後。この二つの映画を続けて見たのが良かったかもしれない。音楽で繋がっていたから。「SUPER 8」はエミール・クストリッツアとノー・スモーキング・オーケストラのライヴとバスの中のインタビュー、それぞれの生い立ちなどのロードムービーです。ただただ楽しいです。このバンドの中でクストリッツア監督はギターを弾いていて、巨体の息子はドラムを叩いてます。チューバ、ヴァイオリン、バラライカ、サックス等々、8人じゃなくて11人います。楽屋の親子喧嘩も
「UNZA UNZA TIME」のPV撮影もただただ楽しいです。このPVはインターネットで先に見ていたのですが、たった1曲という短い時間の中十分にクストリッツア映画を楽しむことができるのです。

「UNZA UNZA TIME」のPVが楽しかったのでさっそくCD購入。映画「黒猫・白猫」の曲が入っているんだなぁ、と漠然と思いながらも日々楽しく聞いていました。「スーパー8」でひとりお育ちの良さそうなヴァイオリンの人がいるのですが、この人が作った曲が良いなぁ、と思いながら聞いておりました。
ヴォーカルのDr.ネレ・カライリチ、だんだん好きになります。ニール・イネスくらい好きになりそう。2曲目の「テントウムシや〜い」は秀逸です。それから、アコーディオンやヴァイオリンなどのトラディショナル(風)な曲も好きです。

エミール・クストリツアとノースモーキング・オーケストラの「UNZA UNZA TIME」)

それから「スーパー8」のDVDを見たんですねぇ。「スーパー8」はDVDで見なきゃ駄目なんですよ、みなさん!是非DVDで見てください。何故かというと、ボーナスがすばらしいからです!そこには「黒猫・白猫」の最後のカオスな結婚式シーンのセットを使ったノー・スモーキング・オーケストラの「テントウムシや〜い」のプロモーションヴィデオが入っていたからなのです。何が楽しいって、音楽のPVほど楽しいものはない。メンバーはヴォーカルのドクトル・ネレとヴァイオリンのダヤン、ドラムのクストリッツァJr.、チューバはドーレ、ベースのグラーヴァ、ギターのコーチェです。演技してます。

SUPER 8

製作年度 2001年
製作国・地域 イタリア/ドイツ
上映時間 92分
監督 エミール・クストリッツァ
製作総指揮 カール・バウムガートナー 、クリストフ・フリーデル 、ドメニコ・プロカッチ 、エミール・クストリッツァ 、アンドレア・ガンベッタ

音楽 ノー・スモーキング・オーケストラ
出演 ノー・スモーキング・オーケストラ 、エミール・クストリッツァ 、
ジョー・ストラマー



「美しき友情の始まり」ですからねぇ(「黒猫・白猫」の中のセリフです。「スーパー8」でもクストリッツア監督が何度も言います)、このゴチャゴチャと物・動物・食べ物・人間入り乱れたセットの中で変なカッコウで歌うドクトル・ネレは最高です。気持ち悪いウエストバッグしてていいっすねえ。わざとらしく趣味の悪いかっこうをしているのですが顔はなかなかハンサムです。クストリッツアJr.は、映画の中でお尻で釘を抜くデカ尻女のかつらをかぶってます(それぞれ役者の衣装を着ています)。映画の素敵なシーンと重なりあってできているPVは本当にボーナスだなぁと思います。これも友情の始まり。映画とPVが同時進行だったということがなんだか嬉しいんですねぇ。映画もCDも制作というのはすべて段取りだと思うのですが、映画のセットを使ってこれだけ一体化したPVが撮れるというのは、たくさん話し合いをしたと思うのですよ。これって「美しき友情」なんだろなー、と思うワケ。


サウンドトラックのCDは良く買います。映画では途中で終わってしまうのでフルトラックで聞きたいというのもあるし、映画に入っていない曲を聞きたいといのもあります。この「黒猫・白猫」の中には、「テントウムシや〜い」がいくつのもヴァージョンで入っています。ほかにも『UNZA UNZA TIME』と重なっている曲が何曲もあって、比べて聞くのも楽しいです。Dr.ネレは「テントウムシや〜い」の歌い方を変えていて、サントラの方はコブシを回すロマっぽい歌い方してるんですねー。映画ではコカイン鼻で吸ってる小悪党ダダンがマイク持って結婚式で歌ってますが(ずっとハイテンション)、多分ネレの吹き替えだと思います。どちらも好きです。

*「BLACK CAT・WHITE CAT」1998のサウンドトラック)

ロマというのはジプシーの正式名称ということらしいけれど、(クストリッツア監督の言葉によれば、ジプシーは自分達のことをジプシーと呼んでいるそうです。最近それが差別用語のようにいわれ、かわりにロマという言い方が通常使われるようになっているよう)、冠婚葬祭に必ず現れるブラスバンドはロマミュージック特有。「黒猫・白猫」では病院にまで現れるブラスバンドが出てきます。このシーンと木に括りつけられてのバンド演奏は、印象的です。とにかくクストリッツアの映画はどのシーンもアイディアに満ちた創造的な構図が特色だと思います。どこで切ってもカッコイイポスターのようです。

ファンファーレ・チォカリーア というルーマニアのブラスバンドがそのバンドなんですよ。この人たちの村の男は全員ブラス吹くんです。ひたすらプハプハドンチャドンチャとやるのですが、それも超高速。日本に来たんですよ、今年2回目だったそうですが知らなかったので行ってません。今度来た時には是非とも行きたいです。「炎のジプシーブラス」というこの人たちを撮った映画もありまして、これがまたレイトショーだったもんだから見られなかった!(見ました2004/12/4)なんてこったい・・・。(調べた結果このバンドではありませんでした。が、このバンドであるという記述が多いです。くわしくは第四回をお読みください05/1/8)「アンダーグラウンド」でも最初っから小走りで現れてますねえ。結婚式に始まる後半もずっと演奏しっぱなし。ストイックだなぁ〜。

このブラスバンドというのは元をただすとオスマントルコの軍楽隊の音楽なんですよね。これは以前から好きでして(変ねぇ)ブンチャカドンドンと朝っぱらから聞いたりします。トルコ軍の戦意を鼓舞するためのものだったんですが、わたしは朝から聞いて一体何を鼓舞してるんでしょうねえ、馬鹿みたいですわ。時代も変わり、だんだん冠婚葬祭のためのものになっていったようです。喜びも悲しみすべてプカプカドンドンで表すのでした。

別に重箱の隅をつつくわけではないのですが、DVDでこのファンファーレ・チョカリーアが演奏するシーンをよーく見ていたら、聞こえてくる音と映像と、どうも楽器が違うのよねえ。多分ノースモーキング・オーケストラの演奏になっているところもあると思います。あー、こんなことまで書くつもりじゃなかったのにぃ。こういった事はきっと誰かほかの人がやってくれると思うのであまり書きません。つまんないし、ホントはどうでも良いことだし。(訂正:「炎のジプシーブラス」を見たあとで、この「黒猫・白猫」で病院のシーン、木に括られて演奏しているシーンはこのバンドの人たちではないことが判明しました。これについては第三回、第四回を参照です。2004/1/8)

変な人たくさん出てきます。小悪党のダダンは最高に変だけど、ほかにもたくさん。でも、ほとんどが俳優じゃないんだよねー、じいさんたちもそうらしい。あ、そうだ、最後に「アンダーグラウンド」のマルコ、「パパは出張中」ではパパ役の人でてきますが、やっぱりおかしかったですねえ。高田純二キャラで。

映画に実際に出演しているノースモーキング・オーケストラのメンバーはヴァイオリンのダヤンひとりだけです。前述したように、この方の作る曲はバルカンのトラディショナルな雰囲気を残しながらももっとたくさんの音楽の要素を入れていい曲作る人だなあと思います。ライヴでやっているのと同じ技を映画でも見せています。弓を口でくわえて弾いてます。映画の音楽担当はDr.ネレ・カライリチとこのダヤンさんともうひとりの名前が出ていますが、この人のことはわかりません。
「UNZA UNZA TIME」の中には「ロミオは本当にバカだったのか」という曲があります。内容がどうゆうものなのかはわからないのですが、DVDをまた見てみて、「ロミオとジュリエット」の仮死状態になるというシーンが使われているのがわかった次第。何度見てもおもしろいです。後半結婚式が始まり花嫁(テントウムシというあだな)が脱走して切り株に隠れ、そこで理想の巨人男に出会うあたりまで怒濤のごとく『恋』『欲』『善』『悪』『生』『死』・・・いろんなものが一斉に前へ前へと突進していくのです。そのスピード感が心地良い。このグルーヴ感はロックだなぁ。

チャーミングなんですよ。すべての人が。どんな人でもかわいいところが一つ見つかると、その人が好きになるものですねえ。わたしも日頃から「おまえなんか嫌いじゃ!」と思う前に、どこかかわいいとこないか?と捜す努力するようにしています。そうすると嫌いじゃなくなるでしょ。むしろその個性を面白く思えるようになるから。クストリッツア監督はどんな悪党でもかわいいところを必ず描いているので、どの人も魅力的で陰険に感じない。ここが好きなところかもしれません。

黒猫・白猫

監督:エミール・クストリッツァ
製作:カール・バウムガルトナー
脚本:ゴルダン・ミヒッチ
撮影:ティエリー・アルボガスト
美術:ミレンコ・イェレミッチ
音楽:゛ドクトル”・ネレ・カライリチ
衣装:ネボイシャ・リパノヴィッチ
配給:フランス映画社
出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トドロヴィッチ
ブランカ・カティチ、フロリアン・アイディーニ
リユビッツァ・アジョヴィッチ、サブリー・スレイマーニ
ヤシャール・デスターニ、アドナン・ベキル
ザビット・メフメドフスキー、サリア・イブライモヴァ
ストヤン・ソティロフ、ズデナ・フルテチャコヴァ
ミキ・マノイロヴィッチ
1998年/フランス、ドイツ、ユーゴスラヴィア合作
カラー/アメリカン・ビスタ ドルビーSR-D/130分

巨人、チビ、金歯、赤塚不二夫キャラ、フェリーニ「アマルコルド」に出てくるようなデカ尻女、ロミオとジュリエット、シンデレラ、この物語りはメルヒェンなんだなー。もしかしたらこれは天国のお話かもしれない、と何度か見たあとフト思いました。猥雑なことがずっと起こっていますが、すべてのバックにある風景はきれいな花畑や楽し気な川辺の遊園地です。ここは国境もない花園の中のユートピア。故郷のないジプシー。内戦後喪失した故郷をあとにフランスに行ったクストリッツア監督も今はジプシーかもしれません。
「アンダーグラウンド」のラストシーン、死者はみんな幸せそうな笑顔で集っていました。「黒猫・白猫」が「アンダーグラウンド」からなんの脈絡もない復活の映画だとはわたしには思えないです。この映画は「アンダーグラウンド」のラストシーンから続いているのだ、とわたしには思える。こうあったら良いではないですか。ハッピーエンドだったら良いじゃないの?あの戦争がドタバタの喜劇だったらよかったのに・・・なんてこと思っちゃいけないだろうけど、夢であったらよかったのに、と思った人は多かったかもしれない。
「死者は死者と、生者は生者と」と呟きながら仮死状態になるじいちゃんが弾くアコーディオンの曲は『DDADY'S GONE』(おやじは逝っちまった)、「スーパー8」ではノースモーキングのアコーディオン弾きマロシェヴィッチがラストシーンで舟の上でトラディショナルを弾きます。NATOの空漠で壊された橋を眺めながら。かれはこう言います。「この国は時間にルーズだ」。
(更新日:2004/11/12)

●松本里美の LOVE ! Emir Kusturica●
・・・混沌・不条理・喪失感、しかしそこには人間への崇高なまでの愛がある。
限り無く美しくカッコイイ映像、わたしはあなたが好きです・・・

きわめて個人的なエミール・クストリッツア礼讃ページです。きょうから不定期更新連載スタート。好きな人は読めるが興味のない人にはまったくつまらないページですのであしからず。04/10/26

第一回:プロローグ
クストリッツア監督作品に初めて触れたのは「アリゾナドリーム」でした。
作品は1994年ですが、見たのはとっても遅くて、2001年のことなんです。「ギルバート・グレイプ」を見たあとのことでした。


何故って、ジョニー・デップが好きだったから。その時ジョニー・デップの作品をビデオで何本も借り続けていました。「エド・ウッド」「デッド・マン」と「アリゾナドリーム」でした。2001年1月のこと。デップさんの映画は残念ながらB級なものが多いのですが、この3本はどの作品も非常に良い作品で、わたしにとってはA級作品と言えます。今となっては怪優とまで言われているデップさんです。無冠であっても存在感はピカ1。今後もわたしはこの人の映画をこれでもか!と見ることでしょう。
「デッド・マン」はとても精神的な映画で、音楽は即興でニール・ヤングがエレキギター1本でつけたもの。これがまた心に沁みる良い演奏なのです。監督は違うものの、ラストの小舟にたゆとうシーンが美しい死への旅の映画です。
この映画では森の変なオバハン役でイギー・ポップが出ています。デップさんは元々ロックバンドをやってた人で、イギー・ポップとはミュージシャン仲間でもあり、良く一緒に映画の仕事(音楽も)をしています。そして、「アリゾナドリーム」では出演こそしてはいませんが、イギー・ポップは主題歌を歌っていたのでした。 良い曲です。

*「DEAD MAN」はジム・ジャームッシュ監督作品、「ED WOOD」はティム・バートン監督です。)

「アリゾナドリーム」があまりにも良かったのでルンルンしてDIARYにこのあたりの話しを書いていましたら、親切にもサントラを送ってくださった方がいました(Kさん、ありがとう)。ああ、いいサントラだなぁ、心に残るどこか哀愁のあるエキゾチックなメロディだなぁと何度も何度も聞きました。イギー・ポップ好きでしたから、ほぅこんなシャレた曲も作るんかい、と感心したのでした。が、アリャ、主題歌はイギー・ポップが作ったものではないではないの。サントラはすべてゴラン・ブレゴビッチの作曲だったのでした。

さて、このゴラン・ブレゴビッチってどんな人?ってことになりますわねえ。自然な成り行きで。「アンダーグラウンド」という映画でも曲を書いていることを知り、たしか前述のkさんに聞いたのだと思いますが、その監督さんはロックバンドもやっているのだ、でも、わたしが映画を見た時の楽しみとしてどんなものなのかは何も語らないでおきましょう、というような謎の言葉を残したのでした。

ウ〜ン、それはどうゆうことなの?と腕組みしたものでした。その含みのある言葉はなんだったのだろう、きっとわたしが好きなものなのだろうなぁ、そうゆうものはひとからではなくて、自分で出会うのが一番ラッキーだから、そのすばらしい瞬間を残しておいてくれたのだろうか、と漠然と思ったものでした。2001年3月、ビデオ屋で見つからず、とりあえずCD屋に行ってみたらエミール・クストリッツア&ノースモーキング・オーケストラ「UNZA UNZA TIME」が売られていました。タワーレコードの人が小さく説明書きしているのを読むと「東欧の管弦楽パンク」と書いてあるのです。あー、どんなのかなぁ、わからなくて怖くてなんか買えない・・・。さらに、「アンダーグラウンド」のサントラも見たのですが、手にとったものの、何故か買わなかったのでした。映画を見てからにしよっと、と思ったのだと思います。

映画や音楽というのは出会いが大事だとつくづく思いますね。
わたしはそうゆう事は急がないんです。きっとその内会える、と思う方が楽しい。そうこうしている内に年末になってしまいました。ちょうどその頃サボテンの「つづく夢」の制作に入っていて、「朝の月」という曲でわたしはきっと会いたい人には会えるだろう、でも、会えなくてもそれもいいのよ、という曲を書いてましたっけね。もしも、あの時「UNZA UNZA TIME」を買っていたらこんなに好きにならなかったかもしれません。ただの東欧のうるさくてちょっと田舎くさいブラスロックだと思って棚の隅っこに置かれていたかもしれません。

2002年9月24日(日記をつけているおかげでキッチリ特定できちゃうのね)この年は暮れに個展を控えていたために、毎日のように工房へ通っていたのでした。やはり暮れに個展を控えていたOさんは、以前映画のポスターデザイン制作会社に勤めていたという映画好き。毎日工房のDJとなっていたわたしとOさん、さんざんいろんなCDかけてました。その頃工房の講師でもあり、パスカルズのラッパ吹きでもあるNさんがパスカルズの新しいアルバムを持ってきていました。その中に「WEDDING POLKA」という曲があり、これはユーゴスラビアあたりの結婚式で練り歩きながらやるような音楽なのでしたが、どうもこのあたりがわたしとOさんのツボだったんですねぇ。Oさんは翌日「アンダーグラウンド」と「ジプシーの時」のサントラを持ってきてくれたのでした。あー、これだ、これは「アリゾナドリーム」にもつながる音楽だ。
もちろんすべてゴラン・ブレゴビッチの曲です。94年から97年ころ、わたしはまったく映画館で映画を見ていません。CD屋にも一度も入らなかった。楽しいものからわざと遠ざかっていた時期なのですが、その時出会わなくてもいずれはこうやって巡り会う、そんなこともあります。

アリゾナドリーム

監督: エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
製作: クローディー・オサール Claudie Ossard
脚本: デヴィッド・アトキンス David Atkins
エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
撮影: ヴィルコ・フィラチ Vilko Filac
音楽: ゴラン・ブレゴヴィチ Goran Bregovic
主題歌: イギー・ポップ Iggy Pop
 
出演: ジョニー・デップ Johnny Depp
ジェリー・ルイス Jerry Lewis
フェイ・ダナウェイ Faye Dunaway
リリ・テイラー Lili Taylor
ヴィンセント・ギャロ Vincent Gallo
ポーリーナ・ポリスコワ Paulina Porizkova
1993年/フランス
が砂漠の上を泳ぎます。幻想的で美しいです。求めても求めても虚無感が広がるばかりですが、不思議と重い気分にはならないのですねぇ。独特のユーモアがそうさせるのかもしれませんが、人生は美しく醜く、真摯に描くほどおかしくなってくるものなんだと思います。シャガールが好きだというクストリッツア監督、海を、空を、浮遊するイメージがいつも全体を覆っている。(更新日:2004/10/26)

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