●はじめに●


みなさん、こんにちは。銅版画家でロックミュージシャンの松本里美です。
『英国フード記 A to Z』のためのロンドン旅行記、もぅお読みになりましたか?それともこれからでしょうか?
どちらから先に読んでも楽しめるフード記、このWebでは絵を担当したわたしの目からのフード記というかロンドン紀行となります。

さて、今回どうしてロンドンに行くことになったのか、というところからのお話。
わたしはかねてから本やデザインや歴史やコメディやロック等々、不思議がいっぱい謎いっぱい、だけど格好よい、いろんな意味でイギリスが好きでした。わたしのサイトには絵をたくさん載せているギャラリーページがあり、ある日イギリス--特にスコットランド関連のエッセイ本を多数書かれている石井理恵子さんがわたしのサイトを見てメールをくれました。これが始まり。

「もしかしたら松本さんは英国がお好きですか?」という言葉を聞いて(見て)思わずいろんな質問をするようになりました。
中でも、食べ物についてが一番盛り上がったと記憶しています。さっそく写真でその奇妙な格好に不信感を抱かせていた「ハギス」なるものについて質問したところ、「新宿のパブで食べられるところがあります。」という明解な答えが返ってきました。
考えているよりも食べるのが一番。
友人を呼んでの試食会となりました。これは一体何でできているのか?どこの特産か?一緒に出てきたモルトウィスキーのこと、たくさん置いてあったエールビールについて、など、俄然英国食べ物話しはマニアックに発展していったのでした。それから数カ月たって、石井さんは英国のお菓子の本を出されました。その出版パーティにでかけて、今度は無骨で真っ黒なクリスマス・プディングをいただくことができました。これは昔クリスマスをモチーフにした展覧会をした時に、見よう見まねで作ってみたのですが、実際に本場のものを食べたのはこの時が初めてでした。そのような経験を何度かする内に、わたしの版画を使った「A to Z」物を作らないか?という素敵なお話をいただくことになりました。
勿論、則お受けして楽しい本作りは始まりました。

A to Z ものというのは珍しいものではありません。わたしも98年の個展で「ABC Sweet cards」というお菓子だけのシリーズを展示しています。これも元をただすと、英国にある言葉カードのアイディアを頂戴したものでした。英国に行くと、細かな地図がのっている「A to Z」地図がどこでも売られていて、住んでいる人でも電話帳のように誰でも持っています。これに則ってやりたいとのお話で、まずはAから順番にあてはまる食べ物を捻出。

『A』はAfternoon teaだろうか?それともAleだろうか?と選ぶのに悩むものもあれば、まったく思いつかないものもありました。たとえば『Q』。文章担当の石井さんと、絵担当のわたしでは選び方にも多少の違いがあります。勿論、一番ピッタリする食べ物があればそれにこしたことはないのですが、選ぶ余地があるのであれば、できたら「絵になる」ものが良い、と思うのは当り前のこと。「あの〜、Queen〜〜〜〜なんていう食べ物ないんでしょうか?あったらエリザベス女王とかビクトリア女王が描けてイギリスらしくていいんですけどねぇ・・・・・・」などと絵の方からの提案もいくつかさせて頂きました。さいわい、『Q』はそれなりのお菓子があって、ホンット良かったです。
こんな風に準備は進む中、 だからって、本当にわたしもイギリスに行く必要はあったのか???というと絶対行かなきゃいけないってもんでもなかったんですよねー、でも、やっぱり雰囲気を感じることは大事ジャン〜〜、とこじつけまして、英国女、石井さんにくっついて一緒に取材旅行することになったのです。
食べ物に関する取材ですからねぇ、そりゃあもぅ幸せです。事前に石井さんには「松本さんの行きたいところ言っておいてくださいね〜」と言われていて、どうせなら、あそこも、いや、ここも・・・と欲張ってみました。言うは易し。しかし、ブッキングするのは面倒ですよね、なんでもそうだけど。そこのところを石井さんには大変ご面倒をおかけして、妥協せず行くことにしました。

イギリスに行くのは、というより海外に行くこと自体17年ぶりくらい。若い頃にはそれなりの楽しい旅の仕方があり、地図を片手の貧乏旅行でしたが、今回は結構マダムな旅行っぷりで、英国に詳しい石井さんにすべておまかせして、しっかり楽しんでしまいました。こうゆうのも良いでしょ。

この『裏:英国フード記紀行』で『EAT & MEET』とタイトルを入れたのにはワケがあって、食べ物にまつわる取材が主だったのにもかかわらず、食べること以外に、人に会ったことがとてもエキサイティングな11日間だったからです。ノホホンと行ってきましたが、17年前では多分経験できなかったことが歳を重ねたおかげで経験できたという感じです。単刀直入に言って、今回の総括の言葉はコレ。
『若い内に一度はバンドやっておこう!老後相当楽しめる。』
バンドだけではなく、同じ音楽を体験していたということがきっと親近感を呼ぶのではないかと思います。これが音楽の力です。絵のために行ったクセに、音楽の方で盛り上がってしまうのは、ロンドンだろうが東京だろうが同じこと。これはもぅ仕方がない。このたびはほとんどミュージシャン(とどうしても大きな声で言えないんだけど)として同行したようなものになってしまったかもしれません。
食べ物についてはたくさんの写真を撮りました。話したいこと、たくさんあるのですが、本が出るまで我慢してました。でも、やっとそれも解禁。では、存分にお楽しみくださいませ!

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2006 (c) Satomi Matsumoto